■ 米国の金融不安の影響
先日の米国金融機関、リーマン・ブラザーズの破たんはセンセーショナルなニュースでした。米国の金融不安から、世界同時株安という大ショックを引き起こしました。
どうしてこういうことになったのかというと、そもそもの原因となるものは米国のサブプライムローン問題。低所得者向け住宅ローンの焦げ付きです。
米国ではずっと景気がよかったために住宅を買う人が増えていました。どんどん住宅の需要が増えるので、さらには収入が少ないけれども家が欲しいといった人たちに対してもローン会社は金利を高めに設定してお金を貸していました。この低所得者向けのサブプライムローンの金利は借入当初は低く設定され、後で大幅に上昇するという特殊な仕組みになっています。住宅の需要が増えていたので住宅の値段もどんどん上がっていたため、「もしローンを払えなくなったら家を売って借金を返せばいい」とか「金利が上がる前に借り換えをすればいい」として収入の少ない人でも安易に住宅ローンを組むことができたのです。
これだけだとローンの返済ができなくなったとしたら、ローン会社が焦げ付くだけです。ところが、ローン会社はこの「貸したお金を返してもらえるという権利(貸したという証明書のような証券)」を他の投資家に売ってきたのです。権利を購入した投資家にとってはローンの元利金を受け取ることのできる金融商品(証券)となります。ローン会社にとっては、証券を売却することで売却代金が見込めるだけでなく、もしもローンが返済不能となって回収できなくなったときのリスクを投資家に転嫁できます。このように住宅ローンを証券化したことで、米国ではリスクの高い住宅ローン貸付ができてきたわけです。しかしその後、それまで好調だったアメリカの住宅市場が冷え込んで住宅価格が低迷し始めると一転、ローンの借り換えに失敗して返済できなくなる人や家を売れずに返済できなくなる人が続出し、その損失が証券を購入した投資家にふりかかってきたのです。
投資家というのは米国内外の金融機関やファンドなどです。証券は不良債権となり、損失となります。リーマン・ブラザースという米国で4番目に大きな証券会社が破たんしたのは、売れなくなったこの証券をたくさん抱えていたからです。また、ファンドでお金を運用していた人が心配になって解約・売却を要求すれば、ファンドは持っている株を世界中で売ってお金に換えようとするため、世界中の株の値段が、一斉に下がります。それだけでなく、米国は世界的に大きな影響力を持つ国なので米国の企業がもうからなくなると自国の企業ももうからなくなるだろうから、今のうちに自国の株も売っておこうと考えて国内株も下がります。このようにして世界中の株が下がり、世界同時株安となりました。
株安は景気下落と少なからず連動しています。そしてお金は世界中でまわっていますから、世界の金融の動きが生活者としての私たちにも直接的・間接的に影響が降りかかってくることが予想されます。対岸の火事ではないはず。
「世の中を見る眼」「先を見る眼」「自分の周りを管理できる力」・・・一見平和に見えるけど先が見えないサバイバルな時代にはまさに培うべき力なのだと思います。