■ 日本の貧困率について
民主党政権が誕生し、先月、国としては初めて、日本の貧困率を発表しました。2006年の日本の貧困率は、15.7%で、これは経済協力開発機構(OECD)加盟国30カ国中、4番目に高い水準でした。
ということは…日本人は貧乏になってきたということでしょうか?
貧困率とは、国民の中に収入の少ない人がどのくらいいるのか(低所得者層の割合)を示す数字です。この貧困率には、「絶対的貧困率」と「相対的貧困率」がありますが、今回発表されたのは「相対的貧困率」です。
「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員の割合をいいます。
※可処分所得とは給与・事業所得・年金などの年間所得から、所得税・住民税・社会保険料・固定資産税を差し引いたものです。
簡単に説明しますと…。1家族の1年間の所得を家族の人数(子ども・無収入の人も含めて)で割り、1人当たりの所得を計算します。その1人当たりの所得を、国民全員、高い順に並べ、真ん中の所得(これを中央値という)が基準となり、その基準の半分に満たない人が占める割合が、相対的貧困率です。
今回は公表された2006年の中央値(平均値ではない。一般的に平均値よりも低くなる。)が228万円で、その半分の114万円の所得に満たない人が占める割合が15.7%で、国民の7人に1人の割合でした。
しかし、これは日本人の7人に1人が貧乏だと言っているわけではありません。
仮に国民全員の所得が年間100万円で同じなら、中央値も100万円ですから、相対的貧困率は0%になります。つまり、この相対的貧困率が高くなっているのは、国民の間で所得の高い人と低い人の所得格差が広がり、いわゆる低所得者層の割合が増えているからです。
ここで理解しておきたいことは、必ずしも「低所得者=貧困状態」ではないということです。この相対的貧困率の算出には、資産(貯蓄、有価証券、不動産など)は加味されていません。つまり、ここでいう低所得者には「収入は少ないが、資産は持っている人」も含まれているわけです。
以上のことから、「日本の貧困率が上がった=日本人が貧乏になってきた」というわけではありません。
が、この冬のボーナスが激減する(経団連によると、一部上場企業で15.9%減と過去最大の減少)と予想されていますし、収入が減少する世帯は多いでしょう。今後ますます、住宅ローンの返済方法や生命保険など家計の見直しを積極的に検討してみる必要がありそうです。
民主党のマニフェストでは、貧困の実態調査とその対策をあげています。今回の「貧困率」の公表がその一歩です。
そして、この貧困率が高くなったことの大きな問題は、国民の間で所得格差が広がり、それが子どもの教育格差につながっていることです。学びたいのに、親の経済的理由から、進学をあきらめる子どもたちがいます…その対策として、「高校の授業料無償化」や「新たな奨学金制度の創設」、「子ども手当」、「母子加算の復活」と「父子家庭にも児童扶養手当の支給」などの多くの政策の実現を目指しています。
今後はどのような調査が行われるのか、どのような対策がとられるのか、国民として注目しつつ、それに対して私たち1人1人もしっかり考えて行動していくことが大切です。