■ 相続税の基礎控除の見直し
相続税の基礎控除の見直しについては、平成23年4月以降の相続に適用される予定ですが、未だ国会審議中です。(今後の審議に注目してください。)
震災の影響なのか、国会議員の怠慢なのか、とにかく国民生活のためにも真面な審議を早くやっていただきたいものです。
そもそも相続税とは、相続や遺贈によって取得した財産価額の合計額が基礎控除額を超える場合に、その超える部分に対して課税される税金のことです。
現状、この相続税は100人に4人程度しか負担していない構造となっており、富の再分配機能が低下していることなどから、基礎控除の水準を引き下げて、負担する人の割合が増えるように見直されることになっています。その内容は、以下のとおりです。
【基礎控除の現行と改正案】
現行
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改正案
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5000万円+(1000万円×法定相続人数)
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3000万円+(600万円×法定相続人数)
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たとえば、夫と妻、子供2人という家族構成で、夫が死亡した場合、法定相続人は3人ということになります。
その場合の相続税の基礎控除額は、
現行 ⇒ 5000万円+(1000万円×3人)=8000万円
改正案 ⇒ 3000万円+( 600万円×3人)=4800万円
となります。
遺産総額から非課税財産や葬儀費用、債務などを差し引いた「正味の遺産総額」が、1億円だった場合、
現行 ⇒ 1億円−基礎控除8000万円=2000万円
改正案 ⇒ 1億円−基礎控除4800万円=5200万円
が、課税遺産総額となります。
相続税は法定相続分(配偶者=2分の1、子=2分の1を2人で折半)で相続した場合で計算する。相続税の総額計算は、
現行 ⇒ 妻 2000万円×1/2=1000万円×10%=100万円
第1子 2000万円×1/2×1/2=500万円×10%=50万円
第2子 2000万円×1/2×1/2=500万円×10%=50万円
相続税の総額 200万円
改正案 ⇒ 妻 5200万円×1/2=2600万円×15%−50万円=340万円
第1子 5200万円×1/2×1/2=1300万円×15%−50万円=145万円
第2子 5200万円×1/2×1/2=1300万円×15%−50万円=145万円
相続税の総額 630万円
となります。
各人の相続税額は、各人が実際に相続した割合で相続税の総額を按分する。
このケースで、法定相続分どおりに相続した場合、各人の納税額は、
妻は、どちらのケースも、配偶者の税額軽減で0円。
子の場合は、
現行 ⇒ 200万円×2500万円/1億円=50万円
納付税額は子それぞれ50万円
改正案 ⇒ 630万円×2500万円/1億円=157.5万円
納付税額は子それぞれ157.5万円
となります。
(以上は概算です。ご自身のケースなどについては税理士や税務署等にご相談ください。)
なお、相続税の最高税率は現行50%となっていますが、改正案では55%に引き上げられる予定です。
ご存知のとおり、わが国では高齢社会となっており、今後も進んでいきます。国民の金融資産の多くを高齢者が持っていますが、介護等の将来不安や物欲の低下(十分に物は持っている状態による)などにより、そのお金を使わず、死蔵された状態となっています。そして、たくさんの金融資産が死ぬまで使われず、相続されます。が、その相続する側の子供もすでに高齢者となっているケースが多く、また死蔵されるという連鎖が起きているようです。これでは国内の市場にお金が回らず、国内経済はよくなりません。
もっと若者にお金が回るようにすることが、日本経済を良くする1つの対策になるだろうと思います。相続時精算課税制度などの活用も含め、相続税や贈与税を構造的に見直し、さらに、若い世代にお金が回りやすくすることが必要でしょう。