■ 老後資金は早いうちから準備しよう
平成26年は5年に1度の「財政検証」の年でした。「財政検証」とは国民年金や厚生年金など年金財政の長期見通しを明らかにするもので、法律に基づき5年に1度改訂します。
「財政検証」は平成16年の年金改正によって法律で定められたものです。
平成16年までは公的年金は5年に1度、財政再計算がされていました。財政再計算とは5年に1度公的年金の保険料を定めるというものでした。
平成16年改正では、この5年ごとに保険料を見直すことをやめ、 最終的な保険料水準の上限を設定してその範囲で自動的に保険料を調整(保険料水準固定方式)し、給付可能な給付水準を自動調整する(マクロ経済スライド)しくみが導入されました。これにより、「財政再計算」はなくなりましたが、財政状況を検証するため
少なくとも5年に1度は政府により「財政の現況及び見通し(財政検証)」を 作成し公表することとされたのです。
平成16年の年金改革では、現役世代の手取り平均収入に対する年金の給付水準(所得代替率)を今後約100年間にわたって50%以上に維持すると法律に明記しました。50%を割る場合は制度改正することを義務づけています。年金の給付水準の標準モデルは40年間夫が平均的な賃金をもらうサラリーマンで妻が40年間専業主婦だった場合を想定されています。現在の所得代替率は62.7%となっています。
平成26年の財政検証の結果から、今後ある程度の経済成長が見込まれれば、30年後の公的年金の給付水準は所得代替率50%を維持できるということになりました。ある程度の経済成長には高齢者の雇用・少子化・女性の社会進出などの対策はとても重要になってくるでしょう。ただ、経済が高成長を遂げる前提のケースでも、現在62.7%の所得代替率が50%程度に低下する予測です。つまり、約30年後の給付水準は現在の2割減となる予測です。逆に経済が低成長を前提とするケースでは、所得代替率は50%を割り、35〜45.7%に低下する予測です。どちらにしても将来的に公的年金の給付水準は引き下げられる予測となっています。
2割削減とはどれくらいのことをいうのでしょう?
40年間夫が平均的な収入のサラリーマンで妻が専業主婦の世帯を例にみると、今の年金給付は所得代替率62.7%で月額21万7000円です。これが51%になると月額17万6000円となります。月額約4万円も受取額が少なるなるということなのです。
これは30年後に受け取る人から減額される、ということではありません。受け取っている人も全員が対象の話なのです。公的年金はマクロ経済スライドというしくみで給付額を自動調整されるからです。
このように見てみるとこれからは個人年金や貯蓄などの自助努力、企業年金、定年退職後の就労収入といった老後の所得全体を考えることが今後ますます必要になってくるといえます。現役時代はとかく支出の多い時。でも教育資金や住宅ローンで老後資金準備にしわ寄せがいくとかなり厳しい老後が待っているとしたら・・・。
やはりこれからは家計管理力がとても大事。ハッピーなリタイア生活を目指して早めに備えていくことが重要でしょう