■ 不妊治療にかかるお金
日本は不妊治療が盛んにおこなわれている国です。2013年は体外受精の治療件数が36万8764件で、その結果4万2554人が生まれました。しかし、治療期間も様々で、複数の医療機関にまたがって治療するケースも多く、治療人数や妊娠率など把握することは難しいようです。
ちなみに、厚生労働省がまとめた“不妊治療をめぐる現状”によると、
【体外受精の実施数(2010年)】
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治療延べ件数(人)
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出生児数(人)
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胚移植から出生に至る確率(%)
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新鮮胚(卵)を用いた治療
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67,714
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4,657
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15.9
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凍結胚(卵)を用いた治療
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83,770
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19,011
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22.4
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顕微授精を用いた治療
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90,677
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5,277
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13.5
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合 計
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242,161
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28,945
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2010年の総出生児数1,071,304人に対して、うち体外受精出生児数28,945人となり、その割合は2.7%と、年々増えている状況です。
女性の為の健康生活ガイド「ジネコ」の不妊治療実態調査レポート(2016年7月実施。インターネット調査。不妊治療経験者813名対象。)によると、不妊治療経験者の27%が妊娠・出産していました。うち体外受精だけでみると32.5%でした。そして、体外受精で妊娠した人の約60%が3回までの治療で妊娠していましたが、9%程度の人は10回以上治療をしていました。また、不妊治療を開始した年齢は平均33.1歳と以前より若くなっていました。
費用に関しては、不妊治療経験者の55%が100万円以上の治療費を負担していました。「50〜100万円」が15%と一番多く、次に「100〜150万円」が13%、「150〜200万円」が11%と続き、「〜10万円」が10%、「10〜20万円」が9%の順でした。
日本の健康保険では初期の一般不妊治療は保険診療が適応され、3割負担で済みます。タイミング療法や排卵誘発剤による治療までは保険が適用になります。しかし、人工授精や体外受精など高度生殖医療を受けることになると、健康保険は使えなくなり自由診療で自己負担です。医療機関によって費用は異なりますが、人工授精で1〜3万円程度、体外受精で20〜60万円程度かかります。仮に体外受精を3回すると、60〜180万円程度かかるというわけです。
この高度生殖医療の不妊治療を行っている人を対象に、国は「特定不妊治療助成制度」を設け、助成金を交付しています。内容は都道府県の地方自治体によって異なりますが、助成金は1回10万円、1年に2回までのところが多いようです。
また、税金の面からいうと、不妊治療にかかった費用も「医療費控除」の対象となります。領収書が必要となるので、確定申告するときに提出できるよう保管しておきましょう。
このように高額な費用がかかる不妊治療を保障する保険が、発売されることになりました。発売されるのは日本生命「ChouChou」という保険で、出産サポート給付金付き3大疾病保障保険に「特定不妊治療」(体外受精や顕微授精)をプラスした内容のものです。この商品では、特定不妊治療を受ける場合、1回ごとに5万円(1〜6回目)、または10万円(7〜12回目)の給付金を受け取れます。注意してほしい点は、給付が受けられるのは12回目までということと、保険に加入してから2年経ってからの治療が対象となること、そして加入できるのは16〜40歳の女性だけという点です。
このような不妊治療の費用を保障する医療保険の販売を金融庁が解禁したのは今年4月です。これから他の商品も発売されるかもしれませんので、興味のある人はニュースに注目しておきましょう。
不妊治療は経済的負担だけでなく、精神的な負担や時間的な負担も大きいといわれます。将来子供をもうけたい人は、男性も女性も、早めに自分の体の状態を検査して確認しておいたほうが良さそうです。今や不妊に関する検査や治療を受けたことがある夫婦の割合は約6組に1組となっているとのことです。何らかの原因で不妊の場合、できるだけ早い時期に治療することによって、経済的にも精神的にも時間的にも負担は少なくて済むようなので、早めに考えておくようにしましょう。