■ 専業主婦も個人型確定拠出(iDeCo)に加入すべきか?
日本版401kとかDCとかとも呼ばれる確定拠出年金。この確定拠出年金には、企業が導入して社員が加入する企業型と、個人で加入する個人型があります。
その個人型確定拠出年金(愛称「iDeCo」イデコ)が、今年1月から加入対象者が広がり、国民年金第3号被保険者(いわゆる専業主婦)も加入できることになりました。ということは、専業主婦の方も加入した方がよいのでしょうか?
そもそも確定拠出年金とは、自分の年金を自分で作るための制度です。つまり、掛金を積立てながら運用をしていき、その結果、60歳以降に年金または一時金で受け取ることができます。
この制度の最大の特徴は、税制のメリットがあることです。掛金を全額所得控除することができるので、所得税・住民税を軽減できます。つまり、所得税・住民税を負担している人にはメリットがあり、所得が多く、税負担が大きい人ほどメリットは大きいというわけです。
例えば、課税所得150万円の人と、300万円の人と、600万円の人で比べてみましょう。
(課税所得とは、総収入から各種控除を差し引いた金額。所得税は復興特別所得税の考慮せず、課税所得150万円は5%、300万円は10%、600万円は20%、またどれも住民税は10%で計算する。)
【掛金月々12000円(年間144000円)を拠出した場合】
課税所得金額
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所得税率
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所得税軽減額
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住民税率
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住民税軽減額
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軽減額合計
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150万円
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5%
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7,200円
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10%
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14,400円
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21,600円
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300万円
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10%
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14,400円
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14,400円
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28,800円
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600万円
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20%
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28,800円
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14,400円
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43,200円
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このように課税所得があり所得税や住民税を負担している人はメリットがあります。
では、専業主婦の場合はどうでしょうか?
専業主婦の場合、パート収入などがあり、所得税・住民税を負担するほどの収入があれば、その所得税・住民税を軽減するメリットがありますが、所得税・住民税を負担しないように働いている場合には、控除する税金がないので、このメリットはないということです。夫婦で考えるなら、収入の多い方が加入した方がメリットはありますね。
しかし、確定拠出年金には他にも税制メリットがあり、その1つが「運用益が非課税」というものです。60歳以降に受け取るまで、運用を続ける仕組みですから、長期間の運用となるケースが多いでしょう。その間ずっと運用益が非課税ですから運用がうまくいった場合のメリットは大きいです。しかし、確定拠出年金で運用する商品には定期預金や保険商品といった元本確保型の商品と、投資信託など運用によっては元本が割れてしまう可能性のある商品があるのですが、定期預金の金利はとても低いので、非課税メリットはあまりないですし、投資信託で運用しても必ず利益が出るわけではないので、非課税メリットは必ずしも享受できるわけではありません。
そうすると、専業主婦で収入もなく、お金の運用経験や知識もない人は、確定拠出年金に加入しない方がいいのかということになりますが…。しかしながら、この確定拠出年金の良さは、もうひとつ、自分の年金を作れることにあります。専業主婦の場合、公的年金は国民年金(老齢基礎年金)のみですから、いわゆる1階建ての年金しかないわけです。確定拠出年金で運用しながら運用益非課税で長期積立して自分の年金を作っていくのは、老後の備えとして良い方法だと思います。
また、現在は専業主婦でも過去に会社員で確定拠出年金(企業型DC)に加入していた人で、現状、確定拠出年金の運用指図者(拠出はせず運用のみしている人)になっているケースもあると思います。その場合は加入者に変更して、新たな掛金を拠出しながら今ある残高と一緒に運用して年金を増やすのもいいかもしれませんね。
専業主婦の場合に限らず、この確定拠出年金には手数料がかかりますので注意していください。手数料は取扱金融機関によって異なりますし、条件によって異なるところもあります。詳しくは個人型確定拠出年金ナビhttp://www.dcnenkin.jp/ などで確認してみてください。取扱金融機関は変更することも可能です。
最後に、この確定拠出年金は、原則、途中でやめることはできません(掛金の拠出を停止または再開することはできます)。制度や運用について理解していから始めるようにしてくださいね。