■ 借金の時効について
借金にも時効があることをご存知ですか?
例えば、飲食店のつけは1年、学校や塾の授業料は2年、医師の診療報酬は3年、家賃および消費者金融や銀行からの借入は5年、個人から借りたお金は10年など、借金の種類によって、時効までの期間は異なります。これが現行法です。
この借金に関する法律(債権法)を改正する法案が、先日衆議院本会議で可決されました。現行法は明治29年に制定されて以来、ほとんど実質的な見直しがされておらず、約120年ぶりの実質改正になります。改正されると、原則、時効は5年となる予定です。
しかし、時効までの期間が過ぎると、勝手に借金がなくなるわけではありません。借金の時効についてまとめてみましたので、参考にしてください。
【消滅時効とは】
債権(貸したお金を返せという権利)は、一定の期間が経過すると時効によって消滅します。このことを一般的に借金の時効と言っています。これは請求する権利を行使せず放置している場合には、時効をもってその権利を消滅させるというものです。ただし、権利を行使すれば、時効の進行を止めること(時効の中断)ができます。
では、時効はいつからの期間で考えればいいのでしょうか。例えば、銀行などからの借金のケースは、最後に返済した日の翌日からスタートします。つまり、この場合、返済をストップしていから5年経過すれば時効となります。
【時効の援用とは】
時効は、時効の利益を受ける者(債務者)が、時効であることを主張すること(時効の援用)によって、成立します。時効期間が過ぎたからといって債務(借金を返済する義務)がなくなるわけではないのです。時効期間が過ぎていても、債権者(お金を貸した人)は債務者(お金を借りた人)に請求することはできますし、裁判にかけることもできます。その際に、債務者が時効の援用をすれば、債券は消滅するわけです。
債務者として注意する点は、債務者が時効の援用をせず、時効期間が過ぎてから債務を承認した場合(具体的には1円でも返済すると債務の承認となります)は、時効の援用はできなくなることです。時効の過ぎていることを知らなかったとしても、もはや時効の援用はできないので、気をつけてください。
つまり、債務を消滅させるためには、次の2点が絶対条件になります。
1.返済を全くしない状態で時効までの期間を経過すること
2.時効の制度を利用することを債権者に伝えること(具体的には内容証明郵便で時効援用通知書を送る方法が一般的です)
【時効中断の方法】
時効を中断させる方法は、@請求、A差押え等、B債務者の承認 の3つがあります。
具体的に以下のようなことです。
@
請求
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A
差押え等
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B
債務者の承認
|
裁判上の請求
・支払督促の申立て
・訴訟の提起 など
裁判外の請求
・内容証明郵便
(普通郵便などによる請求では時効は中断しません)
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・差押え
・仮差押え
・仮処分
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・債務承諾書(支払いを約束する書類にサインした場合)
・一部弁済(1円でも返済した場合)
・支払い猶予の申し入れ
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※裁判上の請求によって時効が中断した場合、その後確定判決などによって権利が確定したら、その時効期間は10年に延びます。
お金を貸す人も、借りる人も、借金に関する法律についての理解が必要です。今後法改正もあるようなので、しっかり理解した上で、契約等するようにしましょう。
借金に関するトラブルはケースごとに異なりますから、実務的には弁護士などの専門家に相談して解決するようにしましょう。