■ 個人年金保険の受け取りについて
老後資金の準備として個人年金保険に加入しているという人も多いでしょう。個人年金保険は保険料を支払っている間、個人年金保険料控除が受けられます。
個人年金保険料控除のメリット
税制適格条件を満たした個人年金保険は、保険料が所得控除(個人年金保険料控除)の対象です。保険料によって控除額が異なりますが、たとえば年間8万円以上保険料をかければ、所得税で4万円、住民税で2.8万円の所得控除が受けられます。
課税所得が300万円の人が保険料を8万円以上かければ、課税所得から4万円控除でき課税所得が296万円になるということです。これによって税金は約7,000円下がります。40歳の人で60歳まで20年間加入するなら7000円×20年=累計で14万円の控除が受けられます。
積み立てすると税金が安くなるのは預金にはない効果。ただ、受取時まで考えることがとっても大事です。個人年金保険は受取時に課税対象となるからです。
受け取り方法は2つ
個人年金保険は年金で受け取る方法のほかに一時金で受け取る方法もあります。一時金で受け取ると年金で受け取るよりも総額が少なくなります。そのため、年金受取したほうが得のように思えますが、手取り額で比較する必要があります。
年金受取すると雑所得、一時金受取すると一時所得になります。
年金受取は社会保険料も視野にいれて
年金受取すると雑所得になります。たとえば60歳から70歳まで年額60万円の確定年金をうけとるときに、60万円がまるまる雑所得になるわけではありません。雑所得は収入から必要経費を引いたものになります。
必要経費はたとえば10年確定年金で保険料総額が550万円だったとして、ざっくり計算すると
60万円× 550万円 =55万円(必要経費)
60万円×10年
∴60万円−55万円=5万円が雑所得になります。
雑所得は他の所得と合算して総合課税されます。これによって税金が増える影響がでます。60歳からまだ働いている人もいるでしょう。給与所得が150万円の人なら雑所得が5万円プラスされます。これによって税金が7,500円増えます。
さらに社会保険料も上がる場合があります。
会社でお勤めしている間は、社会保険料は給料などの報酬に紐づいて計算されるので雑所得の影響はありませんが、会社をリタイアして国民健康保険料になると、所得に紐づいて計算されます。国民健康保険料と介護保険料は自治体によって異なりますが社会保険料が増えてしまうこともあります。
一時金受取は特別控除の活用
個人年金は一時金受取もできます。一時金受取をすると受取額は少なくなりますが一時所得となります。一時所得は50万円の特別控除があります。
総収入金額−その収入を得るために支出した金額−特別控除額(50万円)
たとえば個人年金を一時金受取すると受取額が580万円になるとします。払込保険料総額は550万円ですから
580万円―550万円−50万円=0円
この場合、特別控除により一時所得の金額は0円となり、結果的に税金はかかりません。60歳でまだお勤め中に一時金で受けとっても、社会保険料は給与などの報酬で決まるだけなので影響ありません。
個人年金の受け取り方法を選択するときは、
「一時金受取と年金受取でどれくらいの受け取り総額が違うか」だけでなく、「一時所得と雑所得で税金と社会保険料の差がどれくらい出るか」までを検討するようにしましょう。