■ 幸福な国ランキング1位のフィンランドに学ぼう
2019年度の「世界幸福度ランキング」では、対象国156ヵ国中、日本は58位でした。
幸福度は、各国の対象者およそ3000人の生活の質(人生の満足度)の評価と、GDP(1人あたりの国内総生産)、自由度、信頼度、寿命、社会保障、社会の寛容性などの項目で多方面からはかります。
日本は、寿命やGDPは上位ですが、自由度や社会の寛容度は低く、順位が過去7年間で最下位の記録となってしまったようです。確かに寿命は世界第2位であるし、経済的にもまあまあだと感じている国民が多そうです。物質的にも豊かで、食料品も日用品もお店に行けば品揃えは豊富で欲しいものが手に入ります。その反面、子供のころから集団行動を求められ、なかなか個性を認めてもらえないことや、みんなと違う価値観や、それに基づいた行動に対して批判されることも多いかもしれません。さらに、他人に関心を持つことも少なく、近所付き合いも稀薄になってきていて、何か困っても助けを求められず生きづらさを感じることもあるでしょう。それら様々なことから、結果、ストレス社会となってしまっているようです。
【幸福度ランキング トップ10】
1位
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フィンランド
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6位
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スイス
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2位
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デンマーク
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7位
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スウェーデン
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3位
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ノルウェー
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8位
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ニュージーランド
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4位
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アイスランド
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9位
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カナダ
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5位
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オランダ
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10位
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オーストリア
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トップ10の国々はヨーロッパの国が多く、とくに北欧の国が上位を占めています。
1位のフィンランドは、税金は高いですが、教育などの社会保障もしっかりしていて、社会の自由度も高く、人々が助け合って生きていて、生活の質が高いそうです。
どうしたら生活の質が上がって、幸福な国になるのでしょうか?
フィンランドといえば、サンタクロースやムーミンが頭に浮かびます。森が多く、自然と仲良く暮らしています。冬が長く、夏は短いですが、四季があります。国民性もシャイな性格の人が多く、日本人に似ている点もあります。日本と異なることの中でも一番注目したいのは、教育です。学力は世界一で知られていますが、日本の教育とは違っているようです。
フィンランドでは、国民一人一人が自立し、国の礎となる人を育てる教育をしています。そのためには一生学ぶことを喜びと感じられる教育が大切という考えです。教師は、全員修士課程を卒業し、難関の教員資格試験をパスした人です。教師への信頼や憧れも強く、子供たちの一番人気の職業です。日本のように教師が部活や委員会などの活動をすることはなく、学習指導だけに専念することができます。そのためより質の高い授業ができるわけです。また、フィンランドでは学校の偏差値がなく、どの地域に住んでいても、どの学校に通っても、同じレベルの教育が受けられるようになっています。そして、落ちこぼれをつくらない底上げ教育をした結果、競争しなくても学力世界一になりました。教育費は無料(教科書はもちろん、給食や文房具なども無料)です。そのため家庭の事情に関係なく、質の高い教育を受ける環境が整えられています。
さらに、フィンランドの学校には子供の体やメンタル面をサポートする専門家が常駐しています。メンタルの相談にのるカウンセラーもいて、いじめ対策の専門家もいるようです。さらに歯科医もいて、無料で診療が受けられ、歯科矯正も無料です。
そして、素晴らしいことに、例えば技術を学ぶ教室には、本格的な工具が揃えられており、3Dプリンターまであり、子供たちはそれらを使って真剣に作業するわけです。音楽室も様々の楽器がおかれ、様々のジャンルの音楽に触れることができるようです。つまり、テストのための教育ではなく、生きるための教育、社会に出てから役に立つ教育がなされているのです。ちなみに小学校ではテストや宿題はほとんどなく、授業日数も少ないようです。その反面、読書量は世界一とのこと。図書館も充実していて、宿題がないし、休日も多いので、読書時間も確保できるようです。
このように子供たちの学ぶ環境が日本とは大きく違うのです。もう一つ、日本との大きな違いは、「大人が決めたルールを子供たちに守らせる」のではなく、フィンランドでは学校でのルールは子供たち自身が決めて、教師はそれを守るためのサポートをします。あくまで教師は支援者です。だからこそ、自ら学ぶ自主性が育ち、一人一人が自立し、他人を認め多様性を受け入れることができます。このような教育をした結果、社会が自由で、寛容度も高くなり、生活の質が高まったのでしょう。
社会はそこで暮らす人が作りますから、より良い社会にするためには、教育が大切であることは誰もが知っていることです。日本をもっと幸福度の高い国にするには、フィンランドを参考にして、さらなる教育改革が必要ではないでしょうか。