■ 遺産分割前の故人の預貯金引き出し
2019年7月から、相続において、亡くなった人の預貯金を遺産分割前でもおろせるようになりました。
●従来は・・・
故人(被相続人)の口座は、銀行が死亡を知った時点で凍結され引き出せなくなる、ということを聞いたこともあるでしょう。
凍結されると病院・介護施設・葬儀代の支払いなどに預金を引き出すことができなくなります。相続人の誰かが勝手に引き出して使うことができなくなるのです。
お金を引き出すには、遺産分割協議を終えて、必要書類を出さなければなりません。遺産分割協議が長引くと、遺族の生活費に使うこともできません。
そんな不都合なことがあったのですが、2019年7月からは上限額までなら使い道を問わずにお金を引き出せるようになりました。
●上限額がある
2019年7月からは故人の預金口座から「預金額の3分の1に法定相続分をかけた額」まで引き出すことができるようになりました。(ただし150万円が上限)
たとえば子Aと子Bが相続人で、故人の預金残高が1200万円だったとします。この3分の1に法定相続分をかけた額までということは、子Aと子Bの相続分割合は2分の1ずつなので、以下のようになります。
子Aは
1200万×3分の1×2分の1=200万円
150万円が上限なので、150万円引き出しができます。
子Bも
1200万×3分の1×2分の1=200万円
150万円が上限なので、150万円引き出しができます。
これは1金融機関での上限となります。たとえば、甲銀行にも1200万円、乙銀行にも1200万円あったとすると、甲銀行から150万円、乙銀行からも150万円引き出すことができます。
これは、残された人が当面お金に困らないようにするようにするためのもので、銀行で仮払いを受けることなのです。その後の遺産分割協議においてきちんと相続分が決まったら調整します。
たとえば子Bの仮払いが、協議で決まった相続分より100万円多くなっていたとすれば、子Aが子Bに100万円の返還を要求することになります。
●家庭裁判所に仮払い請求もできる
上限額があるとそれでも困る人もいるでしょう・
家庭裁判所に法定相続分の仮払いを請求して払い戻しを受ける方法を利用すると上限額がありません。
ただし、手続きに時間がかかり、仮払いの理由も求められます。
こちらの方法は緊急度が低かったり、遺産分割協議が長引きそうだったりするときに活用することになるでしょう。