■ 生前贈与機能付保険について
今回は高齢化を背景に、最近登場している生前贈与機能付き保険についてです。
高齢化を表すものに「高齢化社会」、「高齢社会」、「超高齢社会」という言葉があります。65歳以上の人口が、全人口に対して7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。2007年に日本は「超高齢社会」に突入しました。
さらに2025年には、団塊の世代が75歳以上になります。今後は財産の移転「相続」の大量発生が起こることが懸念されます。
いっぽう、2015年に相続税の基礎控除(非課税枠)が4割も縮小されました。相続税が厳しくなったため、相続税対策として生前に子どもや孫へ財産を贈与するニーズが増えています。
贈与税には、受贈者1人当たり年間110万円の基礎控除(非課税枠)があります。とはいえ、例えばそのまま年間110万円を10年間かけて贈与すると、税務署に合計1100万円の「定期金」の贈与とみなされ、贈与税がかかってしまうことも。そのため、毎年贈与するごとに個別に贈与契約書を作成するのが望ましいと言えます。
ただ、毎年贈与するたびに贈与契約書を作成するのは手間がかかりますし、贈与者が認知症になったり、判断能力が不十分になってしまうと、契約行為ができなくなってしまうという問題があります。
そこで最近では、生前贈与機能付保険が登場してきているのです。この保険を活用すると、毎年いちいち贈与契約書を作成する必要がありません。
これは一時払い終身保険がベースとなっています。日本円のほか、高利率の米ドルなどで運用しつつ、年に1回「生存給付金」を受け取れます。この「生存給付金」は契約者以外の人を受取人に指定できます。生存給付金を契約者以外の人が受け取ると、契約者からの贈与となりますが、生存給付金が110万円までなら贈与税がかかりません。
「生前給付金受取人(贈与の相手)」と「生前給付金額(贈与額)を決めておく保険契約なのです。
これは毎年一定額を贈与することなので、一見「定期金贈与」のように見えますが、税務上は「定期金」ではありません。なぜなら「生存給付金」は本人が生きていなければ給付されないものだからです。
また、米ドル建てだと円安が進んで円換算で110万円超になると、申告して贈与税を納めなければならないことになります。そこで、生存給付金を円建てで110万円までに上限設定しておき、上限を超えた分は契約者本人が自分で受け取れるようになっているのが一般的です。これなら受贈者が贈与税の申告をしなくても贈与を受けることができます。
ただ、米ドルなどの外貨で運用するため為替リスクがありますので、高齢の親が契約者として活用する場合は、親子でよく話をしておくことが大切です。