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コラム
 

20204月からの配偶者居住権

 

20204月から配偶者居住権が施行されます。これは配偶者の権利をより手厚く保護するための制度です。

 

 「2025年問題」という言葉をよくききますよね。2025年は、戦後第一次ベビーブーム(1947年〜1949年)の時に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者(75歳)の年齢になり始める年なのです。医療や介護などの社会保障費の急増が懸念されていますが、相続や事業承継もたくさん起こりうると想像できます。

 高齢の配偶者が長年住み慣れた家に住めなくなるようなことがないように「配偶者居住権」という制度ができました。

 

●配偶者が自宅に住めないケースもあった

例えば次のようなケースを考えてみます。

相続人は後妻と前妻の子の2人だけ。相続財産は不動産が1000万、預金がゼロだったとします。

 

相続人が妻と子の2人の場合は妻と子の法定相続分は妻2分の1、子2分の1です。相続財産は1000万円相当の不動産しかないのに、前妻の子が500万円相当の相続の権利を主張してきたとしたら・・・。後妻に500万円の現預金がなかったとしたらどうなるでしょう。自宅を売却して現金をつくって前妻の子に現金を渡すしかありません。でも自宅を売却してしまったら、妻は住むところがなくなってしまいます。高齢者が長年住み慣れた自宅を離れることは、精神的にも肉体的にも負担が大きいでしょう。

 

また「自宅を配偶者以外の者に相続させる」と遺言があり、自宅を相続した相続人から立ち退きを求められたら、妻は自宅に住めなくなってしまいます。

 

●配偶者居住権の創設

配偶者居住権は、「相続が発生する前から住んでいた配偶者の自宅は、配偶者がその自宅を相続しなかったとしても、ずっと住める権利」です。配偶者居住権は、相続発生した時点で、その自宅に住んでいた配偶者にだけ認められます。

 

これは自宅にかかわる権利を「配偶者居住権(使う権利)」と「配偶者居住権が設定された所有権」に分けるのです。

 後妻が配偶者居住権500万円、前妻の子が配偶者居住権が設定された所有権500万円というように分けられれば話し合いがスムーズになります。前妻の子は所有権を相続しますが、配偶者が生きている間、その家を自由に使ったり、貸したり、売ったりすることができません。そのため後妻は自宅に住み続けられます。配偶者居住権は、その配偶者の死亡によって消滅します。配偶者居住権が消滅した後は、「配偶者居住権が設定された所有権」を持っている人が、その自宅の権利を丸ごと所有することになります。配偶者居住権は登記が必要になります。

 

配偶者居住権が創設されても、やはり話し合いが一番大事。生前から来たる相続に向けて方針の共有をしておくといいでしょう。

 

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