■ 妊娠中に退職した場合の社会保険
新型コロナウイルスの感染拡大で、学校なども休校し、無用の外出を自粛する生活になりました。妊婦さんは普段からいろいろなものからの感染予防を徹底していると思いますが、特に今は外出をしたくないのが本音ではないでしょうか。
働く妊婦さんの中には、悪阻(つわり)が酷かったり、体調が悪かったり、通勤が難しい人もいます。例えば、悪阻が酷くて会社を休む場合、会社に制度があれば特別休暇がもらえますし、そうでなくても有給休暇があります。しかし、長引く場合には傷病手当金という健康保険の給付があります。健康保険に加入している妊婦さんが、妊娠悪阻、切迫流産、妊娠高血圧症候などで医師の指示で安静にする必要がある場合は、自宅療養であっても、健康保険の傷病手当金の対象となります。なので、産休までは傷病手当金を給付してもらって会社を休んで、その後産休に入り、出産後に産休が終わったら育休に入るという選択肢があります。
しかし、働いている環境などによってはそういうわけにもいかないケースもあるでしょう。やむを得ず、会社を辞めるという選択をする場合もあると思います。そのような場合の社会保険の給付については以下の通りです。
この場合、出産に伴う給付金と離職に伴う給付金の2つに分けて考えてみましょう。
まず、出産に伴う給付は、出産育児一時金(または家族出産育児一時金)と出産手当金があります。
【出産に伴う給付金】
出産育児一時金
(家族出産育児一時金)
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健康保険から給付される。被保険者および被扶養者が出産(妊娠4か月以上の出産)した時に1児につき42万円給付される。被保険者が、退職などで被保険者資格を失ってから6か月以内に出産した場合も、被保険者期間が継続して1年以上ある場合には支給される。
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出産手当金
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健康保険から給付される。出産の日以前42日目から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間について給付される。被保険者が、退職などで資格喪失した場合、退職日まで被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に出産手当金の支給を受けているか、受けられる状態(出産日以前42日目が加入期間であること、かつ、退職日は出勤していないこと)であれば、資格喪失後も所定の期間の範囲内で引き続き支給を受けられる。
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出産育児一時金は、配偶者の扶養に入れば、配偶者の健康保険から家族出産育児一時金として給付されるので、配偶者の健康保険も確認してみましょう。
出産手当金を受け取るには、退職日が出産予定日の前42日以内である必要があります。そして、退職日は必ず会社を休む必要があります。なので、有給休暇を使うのであれば、有給休暇の使用理由に「出産に伴う休暇」と書いて申請するようにしましょう。退職日を決めるにあたっては、加入している健康保険に相談するなど確認すると良いでしょう。
次に、離職に伴う給付金には「失業給付金」があります。これは雇用保険からの給付で、就職する意思と能力があり、退職前2年間に雇用保険に通算12ヵ月以上加入していることが条件です。妊娠・出産などで退職した場合はすぐに就職活動ができませんので、「特定理由離職者」に該当します。この場合、受給期間の延長手続きをすることで、受給期間を最長3年間延長できます。つまり、出産後、少し落ち着いてから、失業給付金をもらいながら就職活動できるというわけです。
このようにそれぞれの制度ごとに条件がありますので、自分の場合と照らし合わせて、受給可能であれば、忘れず手続きするようにしましょう。