■ 生前贈与加算について
生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に被相続人からの贈与財産がある場合、その分も相続財産として課税対象に加えるという制度のことです。
つまり、生きている間に贈与してもらったあと、3年以内に贈与してくれた人が亡くなったら、その贈与してもらった財産も相続財産になるという意味です。
すでに贈与税を支払っている場合は、贈与税と相続税の二重課税になってしまうので、すでに支払っている贈与税額分を相続税から控除すること(贈与税額控除)ができます。
例えば、以下のようなケースの場合で確認してみましょう。
【被相続人】 夫
【相続人】 妻と子
夫が、生前、子に1年目100万円、2年目100万円と贈与していました。
その翌年(3年目)に夫が死亡し相続が発生しました。
死亡時の遺産総額は、6000万円でした。
法定相続人は、妻と子の2人です。
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この場合、基礎控除額は、3000万円+(600万円×2人)=4200万円 です。
夫が死亡する前3年以内に200万円の生前贈与されているので、相続財産額に加算されます(生前贈与加算)。
つまり、相続税の課税価格は、(6000万円+200万円)−4200万円=2000万円 です。
それを法定相続分で分割したものとすると、
妻 → 2000万円×1/2=1000万円 子 → 2000万円×1/2=1000万円 となり、
相続税額はそれぞれ1000万円×10%(税率)=100万円 で、相続税の総額は200万円となります。
実際にも1/2ずつに分割したとすると、それぞれ100万円の相続税を支払うことになります。
ただし、配偶者の税額軽減があるので、
このケースでは、相続税の納税額は妻が0円、子が100万円となります。
【生前贈与の加算対象外】
3年以内に贈与された財産であっても、以下の財産については加算する必要はありません。
相続財産を取得しない人がもらった贈与財産
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相続人でない人や相続放棄した人などがもらった財産。
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贈与税の配偶者控除
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配偶者(婚姻期間20年以上)へ居住している不動産や不動産取得資金を贈与した場合は2000万円まで非課税。
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住宅取得等資金の贈与
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親などの直系尊属から住宅取得資金を贈与された場合、一定の要件を満たせば、その住宅の種類に応じた限度額までは非課税制度で、その非課税の適用を受けた金額。
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教育資金の一括贈与
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教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度を利用した贈与で非課税の適用を受けた金額。なお、贈与者が亡くなった時の残高は、原則として相続課税対象になる。
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結婚・子育ての資金の一括贈与
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結婚・子育て資金の贈与税の非課税の特例を利用した贈与で非課税の適用を受けた金額。なお、贈与者が亡くなった時の残高は、原則として相続課税対象になる。
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※各制度の詳細は、別途国税庁のホームページ等で確認してください。
相続対策の方法として生前贈与も有効な手段ですが、この生前贈与加算のルールを把握しておかないとせっかくの対策も効果がなくなってしまうこともあります。相続対策を検討する場合、頭の中に入れておきましょう。