■ 介護費用の備え
「2025年問題」って聞いたことがありますか?
2025年とは人口の多い団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるタイミングです。それによって引き起こされる様々な問題のことを2025年問題といいます。団塊の世代というのは1947〜49年の戦後生まれの人で約800万人いるそうです。
具体的な問題は、医療・介護・年金をはじめとした社会保障費の急増が懸念されることです。介護もその一つ。2025年前後には、団塊の世代800万人が75歳以上になることで、介護を必要とする人と介護を支えていく人のバランスが大きく崩れることも予測されます。社会保障としての介護保険もどんどん運営が厳しくなっていくかもしれません。
●介護サービス費の一部は自己負担
介護保険は、介護サービスを利用すると、介護保険負担割合証に記載されている利用者負担割合に応じて介護サービスにかかった費用の1割から3割までのいずれかで利用者が負担するしくみです。
1割から3割のどの区分になるかというのはその人の年収などによって決まります。また介護サービスの対象外のものは全額自己負担しなければなりません。
A
1割負担
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本人の合計所得が160万円未満。
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【単身世帯】
本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満で、年金収入とその他の合計所得金額が280万円未満。
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【2人以上の世帯】
本人の合計所得金額160万円以上220万円未満で、年金収入とその他の合計所得金額が346万円未満。
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2割負担
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A・B以外
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B
3割負担
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【単身世帯】
本人の合計所得金額が220万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額の合計額が340万円以上。
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【2人以上の世帯】
本人の合計所得金額が220万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額の合計額が463万円以上。
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●高額介護サービス費という制度がある
介護保険には高額介護サービス費というものがあります。これは医療保険の高額療養費と同じような制度です。介護サービスを使って自己負担した金額が、所得区分に応じた上限額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給される制度です。
対象者
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負担の上限額(月額)
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課税所得690万円以上
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【世帯】 140,100円
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課税所得380万円から課税所得690万円未満
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【世帯】 93,000円
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住民税課税から課税所得380万円未満
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【世帯】 44,400円
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住民税非課税など
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【世帯】 24,600円
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上記のうち合計所得金額と課税年金収入の合計が
年間80万円以下の人など
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【個人】 15,000円
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生活保護を受給している人など
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【個人】 15,000円
【世帯】 15,000円
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さらに高額医療高額介護合算制度という制度もあります。医療保険の高額医療制度と介護保険の高額サービス費を合わせた制度です。医療保険と介護保険の両方の自己負担が高額になった場合、医療保険と介護保険のそれぞれ限度額を超えたときは、申請により超えた分が支給(払い戻し)されます。
このように見ると介護には介護保険があるし自己負担を超えても払い戻しがあるからそれほどお金がかからない、と思うでしょう。ただ介護保険の対象外のサービスもあります。民間老人ホームに入居する場合の居住費や食事代などは対象外です。実際にはこのような介護保険適用外のところで負担がかかってくるようです。在宅介護の人よりも老人ホームなどの施設に入居した人のほうが負担は大きくなります。
2021年度の生命保険文化センターの調査結果によると、介護でかかるお金は月々の費用が平均8万3,000円、一時的な費用が平均74万円となっています。また介護期間の平均は、61.1ヵ月(約5年1ヵ月)です。これを計算してみると、平均で介護にかかるお金は8万3000円×61.1ヶ月+74万円で約580万円となります。介護が長期になると介護費用の負担は多くなってしまいます。データによると最も多いのは「4〜10年未満」で31.5%です。人によっては介護期間がもっと延びる可能性もあります。
誰でも生きていれば老いるもの。介護費用のために早めに準備と対策をしておくことが大切です。介護保険という制度は2000年に制定されましたが、3年ごとに見直すことになっているので、今後どんどん厳しく改正されることも予想されます。
準備の方法として預金等は、原則として名義人以外がお金を引出すことはできません。判断能力が低下した場合でも、家族は簡単にお金を引出せないので介護費用や生活費の工面に苦労することも少なくありません。民間の介護保険の場合、指定代理請求制度があり指定代理請求人が本人に代わって給付金受取手続きができます。民間の介護保険を検討してみるのも一つと思います。