■ 遺族年金受給の妻が65歳になったら
遺族年金受給中の妻が65歳になると老齢年金が受け取れるようになりますが、遺族年金はどうなるのでしょうか?
【65歳になるまで】
公的年金は「遺族年金」「障害年金」「老齢年金」の3つに大きく分けられます。年金の原則は1人1年金なので「遺族」「障害」「老齢」のいずれかの年金を受け取ることになっています。65歳までに夫が亡くなった場合には遺族年金を受け取れます。
受給要件を満たせば、遺族基礎年金、遺族厚生年金が受け取れます。遺族厚生年金を受け取れる人は一定要件を満たせば中高齢寡婦加算も受け取れます。
●遺族基礎年金
遺族基礎年金は国民年金の被保険者等であった人が亡くなった場合に、一定要件を満たせば、生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある子(障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子は20歳未満)です。遺族基礎年金の金額は基本的に約78万円で子の人数により加算があります。
●遺族厚生年金
遺族厚生年金は、死亡した人が老齢厚生年金を受けているか、または厚生年金加入中で死亡した場合に、本来もらえるはずであった老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の金額が支給されます。
●中高齢寡婦加算
遺族基礎年金は子どものいない妻には支給されませんし、子がいてもその子が18歳に達すれば支給されなくなりますが、夫が死亡したときに40歳以上で、子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金に、40歳から65歳になるまでの間、「中高齢寡婦加算」が加算されます。「中高齢寡婦加算」は約58万円です。
妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、「中高齢の寡婦加算」はなくなります。
【65歳になると】
65歳になると妻が老齢年金を受けられるようになります。原則は1人1年金で「遺族」「障害」「老齢」のいずれかの年金しか受けられませんが、65歳以降は例外として「遺族厚生年金」と「老齢年金」は併給することができます。
●妻の老齢基礎年金
遺族年金を受給していた妻が65歳になると「老齢基礎年金」を受け取れるようになります。「遺族基礎年金」と「老齢年金」は併給することができないのでどちらかの受給となります。
●妻の老齢厚生年金
遺族年金を受給していた妻に会社員や公務員として働いた経験が1カ月以上ある場合、妻の「老齢基礎年金」に妻の「老齢厚生年金」の上乗せがあります。妻の「老齢厚生年金」と夫の「遺族厚生年金」は例外として併給されますが、単純に合計した年金額になるわけではありません。まず妻の「老齢厚生年金額」が支払われ、その額を超える「遺族厚生年金」がある場合に超えた分が「遺族厚生年金」として支給されるというものです。
●夫の遺族厚生年金
65歳以降の遺族厚生年金は、以下の2つを比較し、いずれか高い方の年金額とされます。
・遺族厚生年金そのものの年金額
・遺族厚生年金の3分の2と、自分の老齢厚生年金の2分の1を足した年金額
会社員や公務員として長く働いてきた妻は、夫の「遺族厚生年金」よりも自分の「老齢厚生年金額」のほう
が高くなり、遺族厚生年金が支給されない可能性もあります。
●経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算は妻が65歳になった時点で支給が終了してしまうので、年金額の低下を防ぐため、中高齢寡婦加算の支給停止に伴い経過的寡婦加算が支給されます。
経過的寡婦加算の支給対象となるには、以下の2つの要件をどちらも満たしている必要があります。
1. 寡婦となった妻の生年月日が1956年4月1日以前であること
2. 中高齢寡婦加算の受給に必要な要件をすべて満たしていること
生年月日が1956年4月2日以降の妻については経過的寡婦加算の対象になりません。経過的寡婦加算は生年月日によって決まっています。
遺族年金を受給していた人は65歳以降の受給額がライフプランに大きく影響するので、確認しておきましょう。